
中国のゲーム規制の国内市場への影響について
解説します
日本のゲーム会社は、家庭用ビデオゲームやキャラクターを活かしたゲームシナリオによりゲーム市場を牽引してきた。しかし現在オンラインゲームにおいては、中国ゲーム会社の作品が世界を圧倒しつつある。日本で人気のゲームには大作やIPものが多く、競争が激しい日本ゲーム市場ではIPを活用することがロングヒットに大きな影響を与えた。中国のゲーム規制 を受け、海外展開に力を入れる中国企業は積極的にIPを取得し日本進出を強める。また日本だけでなく、規制のない国や地域への展開を加速し海外売上高の向上に繋げている。
中国におけるゲーム規制の推移
中国のゲーム人口は6億7000万人に上り、2020年の総売上高はコロナ禍の「巣ごもり需要」の影響を受け、前年比21%増の2786億8700万元(約4兆7399億円)に達した。その8割近くがスマートフォンゲーム関連であった(※1)。2020年の日本のゲーム人口は5273万人(※14)であることから、中国のゲーム市場の大きさが伺える。
中国ではオンラインゲームを公開する際、メディアを管轄する国家新聞出版署の審査と「版号」と呼ばれるライセンスを受ける必要があり、ここ数年は1ヶ月に一度交付されるのが慣例であった。しかし、未成年の62%は頻繁にオンラインゲームで遊び、平日1日当たり2時間以上ゲームをする未成年も13%に達している(※8)現状が問題視され、ゲーム規制が強化された。その結果、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、同署は昨夏から審査を厳格化しており、内容に法律違反や国家機密の漏えいがないかなどに加え、プレーヤーが殺人を犯すような内容や「女性的な男性」「史実の歪曲(わいきょく)」などが規制された(※4)上に、新作発売に必要な認可が2021年7月を最後に停止されている(※1)。さらに、2021年9月には未成年者(18歳未満)へのネットゲームサービス提供の時間が週末や祝日の1日1時間のみに限定された(ゲーム中毒防止法)(※1)。

(※5)
こうした規制は、若者のゲーム利用時間が90%減少(※2)するなど中国国内に大きな影響を与えた。一方、上述したように新作発売が許可されないことから、開発中のゲームを発売できず、5ヶ月で少なくとも1万4000社以上のゲーム会社が倒産(※3)したと言われている。加えて、8月初旬には国営通信、新華社系の新聞の経済参考報が、オンラインゲームは子どもの精神をむしばむ「アヘン」として、中国で大人気のゲーム「王者栄耀」を手掛けるIT大手、騰訊控股(テンセント)を名指しで批判したことから、同社や、日本でも人気のゲーム「荒野行動」で知られる中国のIT企業、網易(ネットイース)の株価が急落(※4)。ネット検索大手である百度(バイドゥ)や、Tik Tokを運営するByteDanceがゲーム部門を縮小しリストラに踏み切る見込みが報じられ、事業縮小や人員削減の波が広がっている(※4)。また、日本など規制のない海外市場に活路を求める動きが加速し(※4)、中国開発ゲームの海外売上高は21年7〜9月期に49億ドル(約5500億円)に達した。

(出所)中国ゲーム産業研究院など(※1)